「Lagrangian point(ラグランジュポイント)」とは、Gallery PARCの会場提供による大学協力展のひとつとして、愛知県立芸術大学 大﨑のぶゆき研究室による主催として開催するもので、2014年の「Lagrangian point」、2015年の「Lagrangian point - パースペクティブ カスタマイズ-」、2016年の「Lagrangian point -To Form-」、2017年の「Lagrangian point -Drive on the Halfway-」に続き本展で5回目の開催となります。
本展「Lagrangian point -Telepathy-」は、浦野貴識と木下雄二の二人展として構成されています。
2階展示室にインスタレーションを展開させる浦野貴識(うらの・きさと / 1996年 愛知県生まれ)は、商用に見られるディスプレイや什器といったしつらえや形式への興味を出発点とする作品を展示しています。私たちはこうしたディスプレイを目にした時、それがある目的(商品販促)のためだけにデザインされた(軽薄かつ希薄な)舞台セットであることを諒解しながらも、同時にそのセットで語られる物語を受け取り、時に積極的に読み込んでしまうことの矛盾に無自覚でいます。浦野は、その矛盾を批判するのではなく、そこに生じるリアリティを「ある」ものとして取り出し、拡張するで、「わからないけれど、わかる:わかるけれど、わからない」の存在に目を向けさせます。
木下雄二(きのした・ゆうじ / 1994年 奈良県生まれ)による《 Language games 》は、3階の写真とテキスト、4階の映像によって構成されています。「対話」をモチーフとした本作品は、コミュニケーションのプロセスに使用される言語を一旦「立体」へと置換され、再び言語(メモ)に戻す構造を持っています。ここに可視化されるのは互いが想像のみで進めるディス・コミュニケーションのカタチであり、まるでそれこそがこのゲームの面白さのように見えるかもしれません。しかし、目の前のガムを介した不気味で一方的なコミュニケーションが、実は普段の私たちの言語によるものと同様のであることを発見することになります。
この2名の作品はいずれも自身を取り巻く「わからないけれど、わかる:わかるけれど、わからない」ものに注視し、そのことについて思索しているように思えます。また、どちらもそこに「正しさ(答え)」を探すことではなく、自らに生じた「問い」が、「果たして問いなのか?」について自問自答するかのように作品制作に取り組んでいるように思えます。