京都の街角に多く残る地蔵菩薩や大日如来などを奉ったホコラ(路傍祠)。その多くはコンクリートや石詰みの基礎の上に木造の社を持ちますが、そのしつらえにタイルを取り入れたものも見受けられるなど、その「生態」は多様でいて奥深く、様々な興味と想像を掻き立てます。その生態系に着目したリサーチを出発点に、谷本 研と中村裕太の二人の美術家が、ゆるやかなユニットとして2014年より取り組むプロジェクト「タイルとホコラとツーリズム」。「ホコラ三十三所巡礼案内所」をイメージした会場を起点に、市内の特徴的なホコラを巡った「ホコラ三十三所巡礼ツアー」などを開催した2014年の「タイルとホコラとツーリズム」以降、2015年の「season2《こちら地蔵本準備室》」では「地蔵本」の出版を目標に様々な資料・文献を集め、2016年の「season3《白川道中膝栗毛》」では書籍『北白川こども風土記』に導かれ、仔馬とともに白川街道を京都から大津へキャラヴァンしました。また「東アジア文化都市2017京都 ─アジア回廊 現代美術展─」での発表となった2017年の「season4《一路漫風!》」では、対馬・沖縄・台湾・済州島など、隣国との境界的な島々を巡りながら、ホコラを通じて各地の土着信仰を見つめてきました。こうして「タイル」と「ホコラ」と「ツーリズム」をきっかけにはじまる二人の旅は、いつもそれぞれ異なる注目・興味にたどり着いては、その「眼差し」を土産として持ち帰り、並べ・見せ合い・話し合い・思い出したりするものであったと言えるのではないでしょうか。
5回目となる今回。二人は『山へ、川へ。』をテーマ(符牒)にそれぞれフィールドにくりだし、「石」への「眼差し」を持ち帰り、山と川に見立てたギャラリー・パルクに重ね合わせて、其処にツーリズムを出現させます。また、会期中には関連イベントとして、「season3《白川道中膝栗毛》」にて巡り合った京都・山中町の「重ね石」を再び訪れる路線バスツアー「川から山へ|山中町・重ね石再訪」や、5年におよぶ活動を織り込んだ谷本筆による『参詣曼荼羅』の絵解き付きサンセットBBQ「屋上ホコラ盆」を開催します。
ギャラリー・パルクではお盆の恒例企画となった本展の会場には、5年におよぶこれまでの活動を織り込んだ谷本筆による『参詣曼荼羅』をはじめ、「石」にまつわる行為を手がかりとした中村による展示が開かれます。鑑賞者の皆様には、二人の美術家の旅の土産(あるいは土産話)から、彼らの足跡を辿る旅をお楽しみいただけるのではないでしょうか。また、その眼差しを通じて「私たちの身近な暮らし中にある、興味深いアレコレ」を発見できる機会になるのではないでしょうか。