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Exhibition info

何かによる、何かしらの、何かであって、そして何だか正しいらしい何か
越中正人

2017.12.29. ~ 12.27.

Exhibition View

8 images

Statement

集合は同じ目的や環境によって意識せずとも形づく。集合の中には多数の個が存在し、一つ一つの個は「個」としての自身を認識している。集合しても個とは唯一絶対的な存在であるにも関わらず、他者からは他者の価値観や好みで個としての存在よりも量や数で総称されることがある。集合の中の「個」に対して他者と自己が持つ認識に差があることを感じた。この差を模索するために、「集合と個」の関係に着目し制作してきた。

近年制作している中で、集合した多数の個によって多様化が生じるはずが、気づかないところで多様化は消え、時間と共にいつのまにか集約された1つの結果のみにすり替わっていると感じることがあった。この画一化の結果までの過程には多くの意見や試み(多様性)があったはずなのに、他に選択の余地がない結果(画一性)のみとなり、そして、私はそれを当たり前のように従順していると感じだ。多様性である根源を集めることで、ひとつになった過程や理由が表面化されるのではないかと思っている。

 

越中正人

About

展覧会について

 越中正人(こしなか・まさひと/1979年・大阪生まれ)は、これまで写真をおもな表現媒体として、2000年の「Mio Photo Award 2000 優秀賞」受賞をキャリアのスタートに、2008年には『UBS Young Art Award for Asia』(G27 / チューリッヒ・スイス)を受賞、2009年に越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)への出品、2013年にWROメディアアートビエンナーレ(ポーランド)などの国際展に参加するなど、これまでに多くの個展・グループ展での発表、アートフェアへの参加などにより、その活躍の場を広げています。また、近年では「BIWAKO BIENNALE 2012」(滋賀・2012年)での《Hidden present》や、「Anagolism」(C.A.P. / 神戸 / 2015年)での《hello...》などの映像作品、個展「from one pxcel」(ポーラ美術館 / 神奈川 / 2015年)では、セザンヌへのオマージュとした映像インスタレーション作品を発表するなど、その表現方法は多様化・多層化しているといえます。

 

 そうした作品制作の根底には「集合(集団)」と「個(個人)」の関係性への眼差しが通底しており、越中はそこに写真を介在させることにより、それぞれの成り立ちや変容、その狭間に在る多様さや曖昧さの様相、そこに生じる相互作用あるいは分断など、「私と私たち」を包む不可視を捉えた作品を制作しています。

 

 本展では現在に越中の眼差しの向く先を、大きく二つの作品から知ることができます。

 展示されるビデオ作品《冥婚》は、未婚のまま亡くなった者を、その遺族が不憫さや一族の繁栄を閉ざすかもしれないという恐れから、死後婚姻させるという日本・アジアに多く見られる風習「冥婚」を題材にした作品です。現在において婚姻とは、歴史、人種、経済などの様々な背景が溶け合う多様性の因子であるとも言えますが、こうした風習では価値感や概念などの見えない「正しさ」が、死後の世界を「在る」として死者にまで向けられ、求められている様を切り取ったものといえます。また、本展では越中の新たな試みとして、AR(Augmented Reality=拡張現実)を取り入れた「写真作品」を発表します。端末を通して見る目の前の風景に仮想の視覚情報を加え、重ねて表示するこの技術は、近年では『Pokémon GO』に取り入れられるなど、私たちの身近に多く見られるようになりました。自身の目を通して見る「在る・無い」の境目が消失した風景の中で、では私たちはその風景により疑いの目を向ける必要があると言えますが、しかし実際にはそれらは「在る」とされて扱われ、実際の行動や思考にまで大きな影響を及ぼしている。越中は新作《checking "checking answers"》のシリーズにおいて、ARを通して見る世界に、シンプルでユニークな方法で「答え合わせ」という眼差しを導入します。これにより鑑賞者は自身の目の前の風景を「見比べ」ることになるのですが、次第に「答え合わせ」の「答え(正しさ)」をもまた、疑うべき対象であるかもしれないことに思い至るのでは無いでしょうか。

 

 本展は、多様性から画一性、個から集団へのモーメントがどのように生じ、どのような関係性を持ち、どのようにして収斂されていくのかを、「風習・習俗」と「先端技術」の二つの視点から考察するものになるのではないでしょうか。