2004年に名古屋造形芸術大学を卒業、2016年に京都市立芸術大学 大学院美術研究科 絵画専攻を卒業した髙須健市(たかす・けんいち/1980年・静岡県生まれ)は、これまでにアーティストとしての多様な活動とともに、自らアートスペースを運営するなどの活動を続けています。
『物事の見方や考え方をほんの少し変えるだけ。』
髙須はジャンルや素材・技法を固定しない、様々なアプローチによる作品制作・発表を続けています。たとえばゴミであったチラシを高級ブランドロゴのカタチに切り抜いて部屋中に貼っていったり、雑誌や絵本においてその対象であるはずのアイドルやキャラクターなどをことごとく塗りつぶしたり。あるいは近年では「宇宙」をテーマとして、シャーレに発光ダイオードとボタン電池を混ぜ入れ、これらを回転させて偶発する光の瞬きを生み出したり、人類が初の月面着陸に用いた靴底を再現した履物をつくり、特別に調合した月の砂の上を歩いたり。
これらシンプルでいてユニークなアプローチによる作品は、消費のためにつくりあげられたイメージの氾濫に加担する「私(私たち・消費者)」に向けられたチクっとした批評性や、フワッとしたファンタジーの領域にある宇宙の姿や仕組みを研究し、それらを手の届く(即物的な)素材や現象に置き換えて、目の前に出現させているものです。
本展は同一会場における展示を、過去作中心による「Jamais vu」と、新作中心による「Deja vu」として、作家の異なるアプローチによる作品を一堂に展示するものです。「Jamais vu」では広告パネルやポスターから、人物のみを塗りつぶした《Lost and Found》のシリーズなどを中心に、「Deja vu」は発光ダイオードの瞬きが美しい大型のインスタレーションにより構成されます。
この機会に、一人の作家の異なるアプローチ、あるいはそこに通底する『物事の見方や考え方をほんの少し変えるだけ』といった思考をお楽しみいただけるのではないでしょうか。