感じたことを感じたままに伝えることはとても難しい。不安定な音程のボーカルにズンドコドラム、これが美しいのです。自分の考え方を理解してくれるのが同じ言葉を話す人ではなく、全く別の話す人である場合もあるのかもしれない。空想の世界から離れなければならなかった。苦しみのなかで穏やかな気持ちを取り戻すためにはそうする必要があったのだ。空想は時の経過と共にこの世から完全に消えてしまうわけではない、無意識といったかたちで常にどこかに潜んでいる、空想のドキュメンタリー。
市ノ澤 萌々子
感覚が機能しなくなるような鈍くなる空間を作り出したい。「感覚の鈍くなる空間」とは、例えば雪壁やダム、巨大な砂山などの前に立ったとき、物質のあり方に圧倒される瞬間のことである。またこの空間は時に蛍光灯に照らされた植物の生々しい緑に出会ったときのような、非日常以外の場でも似たような感覚に出会うことがある。場と物質から作られる空間の関係性を、作品を通じて探っている。
亀倉 知恵
目に見えないけれど"ある"と直感し、そしてそれが大切なものだと知っている。それを人に伝えたいのに言葉ではうまく説明できず、またささやき声のようにさりげないためにいつの間にか忘れてしまう。そんな事柄をなんとかして記録したいと考えています。作品を作るということを通してならばその方法を見つけ出せるのではないかと考え、制作しています。それ、はまるでオバケのようです。目に見えないだけではなく、よくわからないからです。私が"ある"と感じるということは、あなたにも"ある"と感じてもらえるかどうかわからない。そもそも、私の中の秤が"ある"もののことだけを"ある"と感じ取っているのか疑わしい。本当に"ある"のかよくわからないのです。私は、このわからなさをできるだけ誠実に観察し、私が何をわかっていて何をわからないでいるのか知りたい。そして、このオバケに血や肉をあげて体を作ってやりたい。このオバケへの親しみをなんと言ったらいいかわかりませんが、生き生きとしたその姿を見たいと思います。
箱山 朋実