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Exhibition info

Scales, others
前川 紘士

Maekawa Koji

2015.11.7. 〜 11.22.

Exhibition View

8 images

Statement

 私はこれまで一個人の関心を一つの主題に還元するのではなく、個別の状況に入り込む中でそれぞれの機会の構造を知り、その中でどのようなものが立ち上げられるか、そこからどのような実感や可能性を見出すことができるか、ということに関心を持ち自らの実践を継続してきました。

近年は、大小、自主運営/参加、それが美術と呼ばれる活動かどうかに関わらず、個人的な関心を元に、様々な要素の関わる状況や他者との関わりの中で立ち上げる企画や試みを多く行い、またそれらと並行するかたちで、スタジオや自宅を中心に、出発段階では落とし所を設定しない制作やリサーチも断続的に続けてきました。

今回の展覧会は、2011年からスタジオを中心に進めてきた制作群の中から発展してきた、「大きさ」「かたち」「数」への関心と結びついた作品群を中心とした展示を予定しています。

スタジオの卓上を「地球という球体の表面の一座標」として捉え、そこでの水滴の大きさ、またその固有の大きさで可能な事柄を確認することからスタートしたドローイング、その制作過程で新たに生まれてくる興味や想像から発展させたものなど、現在も継続・展開中のシリーズを出展予定です。

活動の拠点とする関西での個展は初ということもあり、いくつかの資料の提示と共に、現時点での実践のあり方を確認できる機会となればと思っています。

 

前川紘士

About

 2004年に京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻を卒業、2007年に同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了した前川紘士(まえかわ・こうじ/1980年大阪府生まれ)は、「個人の持つ異なる複数の関心をひとつの主題に還元するのではなく、個別の対象との関係の中でそれぞれの機会の構造を知り、そこからどのような実感や可能性を見いだす事が出来るか」という思考に従い、これまでに様々な活動をおこなってきました。

 前川の関西での初めての個展となる本展『Scales, others』は、2011年から断続的に展開・発展させてきた「大きさ」「かたち」「数」への関心に紐づく作品群を中心に構成されます。

 展示作品である「Space of drops」のシリーズは、一粒の色彩の雫を「1単位」として捉え、紙に滴下したそれらを限界までペン先で引き延ばしたドローイングです。同一の因子に端を発するそれぞれのカタチは、前川の時々の試みや想像・興味によって出現したものであり、《100_Space of drops》は100滴分のカタチが並置され、様々な群をつくりながら展開しているものです。

 また、「Space of hands」のシリーズはその単位を「自分の手のひらの中の空間を充填するもの」として、両手一杯に詰め込んだ粘土や紐による立体群が広がっています。

 「Hands projection」は、まず手のひらサイズの粘土による原型の表面を多面体となるように三角形で分割し、そこに面積がそれぞれ2倍となるような3種類の正三角形を埋め込んだ展開図を基にしたペーパークラフトです。それらは段階的に拡大・複製して組み上げることが可能であり、その展開図はPDFデータや印刷された情報として拡散・使用出来るものともなっています。そして、これらはいずれも前川の身体周辺の大きさを基点として、そこに手によって関わりながら思考され、カタチへと展開されているものです。

 

 本展では、こうした「大きさ」や「かたち」にまつわる作品の他、いくつかの資料によりこれまでの前川の活動を知る機会ともなります。

 前川は2009年の『仕掛け景色|ramble point』(mograg garage、東京)や、2012年の『風景に同期する』(トレジャーヒル・アーティストビレッジ、台北)などの個展や、2007年の『FLY』(IAMAS、岐阜)、2010年の『京芸Transmit program#1 きょう・せい』(@KCUA、京都)、2014年の『雲の建物』(Q2、神戸)などの展覧会への参加とともに、自主的・間接的に多くのプロジェクトにも関わっています。

 例えば2008年~2009年の『半外プロジェクト』(京都民医連中央病院)は、京都民医連中央病院の設立20周年記念事業としてモニュメントの制作依頼から始まったもので、その依頼に前川を含む3名の美術家が「病院で何が出来るのか」をもって応えるカタチで進められ、病院入口横の扉のない小さなスペースを用いて、病院・地域・美術にまつわるリサーチや展示を試行したものです。これは以後にリサーチプロジェクト「半外プロジェクトP&I(プレゼンテーション&インタビュー)」へと展開しています。また、障害を持つ参加者と作家がペアを組み、一定期間に恊働制作を試みるプロジェクト『奈良県障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA 2011-12 アートリンクプロジェクト』(2012年・奈良県文化会館)や、『CITY IN MEMORY -記憶の街-』(2013~ 2014年・堀川団地、京都)、『Basic Income Kyoto』(2013年~・ソーシャルキッチン、京都)、『ひと花センター 美術の時間』(2013~・ひと花センター、大阪)などについては、前川が主体であると同時に参加者のひとりとして関わりを持った実践でもあります。

 本展を構成するこれらの要素から、前川は美術や作品、展覧会やプロジェクトといった形式や分類などに関わらず、それが「どのようなもので」「どのように作用し」「どのようなものが生まれるか」という因果の回路を見出そうとしているように思えます。また、そこに自らをも因子として含む(入り込む)ことで、その回路の振る舞いを実感し、そこにある「拡がりの可能性」をも積極的に捉えようとしているかのようです。

 本展会場に展示される個々の作品や資料は、こうしたプロセスがひとつのカタチとして可視化されたものであるといえます。私たちはそこに「私」という因子を含めることで自らを含む世界を積極的に捉え、世界の意味を深めることができるかもしれません。

 

【 協 力 】 東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)

Event

■『オープニングパーティー』

11月7日[土]17:00~

軽食: 山福

 

■『今回の展示や最近の活動について』

11月14日[土]13:00~

聞き手: 正木裕介(Gallery PARC)

*近年の活動から本展展示作品についてスライドを交えてお話しするアーティストトーク

 

■トークイベント『ご近所話から』

11月21日[土]13:00~

ゲスト: 猪瀬浩平氏(見沼福祉農園/文化人類学者)

*前川が「半外プロジェクト」 (2008~09年)後のリサーチの過程で知り合って以降、断続的に連絡を取り合う猪瀬浩平さんをお招きしたトークセッション。