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Exhibition info

Blanket and dog

寺岡 海

Teraoka Kai

2015.9.1. 〜 9.13.

Exhibition View

11 images

Statement

私は、私がこの世界に対して不可能であることについて考えています。
例えば、私は空をとんだり、時間を止めたりすることはできません。そんな当たり前のことの原因を考えることによって、自分の身体と世界の関係を考えるひとつのきっかけをみつけることができます。このように世界と私の間における不可能性を考えることは、同様に可能性を考えることにつながるのではないでしょうか。
それは世界と私の間にある関係性の輪郭を強くするためのものであり、この現実をきちんと捉えるための方法であると考えています。

 

[ 展覧会について ]

「犬を撫でていた。目が醒めると私が撫でていたものは毛布だった。」
知人から聞いたこの夢の話がおもしろいと思った。おそらくその瞬間、毛布は毛布であると同時に夢の中では犬であった。しかし、この毛布であり犬であるというこの奇妙な状態も、現実からみればそれは毛布でしかなく、夢の中では犬でしかない。その両方の状態を確認することはできない。いざそのような、毛布が犬に化けてしまうような不安定な世界が目の前に広がっているとぞっとする。なぜならこれは空想の話ではなく、私に知覚することができないというだけの現実だからである。
私たちは私たちが存在する以上絶対に知ることができないものがある。目の前の毛布はどうしようもなく毛布である。犬であることもないことも私には確かめることはできない。そのような私たちの知ることができない世界に対して何ができるのか。目的は知ることではなく、知ることができないことを認めることだ。

寺岡海

About

 2012年に京都嵯峨芸術大学油画分野卒業した寺岡海(てらおか・かい/1987年・広島県生まれ)は、2012年に個展「世界と私のあいだ」(KUNSTARZT・京都)を開催、2013年より選考された「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」(京都工芸繊維大学美術工芸資料館)などでの発表を続けています。


 寺岡はこれまで自らの疑問や興味について考えたり、実験したり、そのためのメディアを選んだりしながら、それらプロセスを作品として提示するかのような発表に取り組んでいます。

 例えば《雲を反対側から同時に撮影する/2011年9月13日(火)12時15分》という作品では、「目の前の空に浮かぶ雲の裏側はどうなっているのか?」の疑問に対して、「実際に空に浮かぶ雲のオモテとウラにまわってみる」ことを「してみた」もので、会場には行為と結果にまつわるの映像や写真が展示されました。また、《星をつくる》という作品は、発光するプラスチックの星をヘリウムガスを充填した気球で夜空に浮かび上がらせ、私たちの目に映る夜空に星をつくる試みでした。その他にも知人に枕を借りて、その枕で寺岡が眠って見た夢の記述を展示した「人の枕の夢をみる」や、「アーティストの寝ている姿を撮影する」などのユニークな試みは、いずれも「自分のコントロールすることができない出来事」への興味を発端に、方法やメディアを選びながらアプローチされたもので、その興味が寺岡の動機となっていることがわかります。

 

 本展「Blanket and dog」では、寺岡の知人が語った「夢の中で犬を撫でていたのですが目が覚めると自分の被っていた毛布を撫でていた」というエピソードに端を発するものです。「世界と私の間における不可能性を考えることは、同様に可能性を考えることにつながるのではないでしょうか。」とする寺岡は、この話の中で「現実の世界での毛布と夢の中の犬がその二つの世界をつなぐものとして存在していること」に注目し、ここから「夢の犬を触れる為の方法を実践したり、この考え方を用いたときに夢と現実の間に起こりうる問題を考えてみたい」としています。
 会場にはこのテーマに対し、寺岡の「過程」と「方法」が、写真・映像・言葉などによりあいまいな結果として展示されます。さて、「夢の中の犬に触れる」ことはどう不可能だったでしょうか。

Text

・関連テキスト「夢の世界までの距離」(執筆:安河内宏法)>PDF