牛島光太郎(1978年・福岡県生まれ)は、2003年に成安造形大学彫刻クラス研究生を修了以降、おもに『scene』と『意図的な偶然』のふたつのシリーズを軸に作品制作・発表を続けています。
大学在籍中にはおもに石彫作品の制作に取り組んできた牛島は、次第に「モノと文字(言葉)」による作品を展開させ、2003年より『scene』と名付ける一連のシリーズを進めます。牛島は『scene』において、「物語をつくる」という事を強く意識しながらも、意図的な物語の構築は避け、日常のとりとめない場面や出来事などを切り取り・つなげ、そこにシーンのようなものを浮かび上がらせます。『scene』は「モノと言葉」(日常品や拾ったモノと、おもに刺繍による言葉)によって構成され、それらは一見すると「無関係な距離」を保ちながらも、鑑賞者はそれらが「いつか・どこかで交差する」かのような「予感」を覚え、その茫漠とした『scene(風景・光景・情景)』の中に確かに物語を見るのではないでしょうか。
この『scene』による一連のシリーズは、2003年よりscene-1、scene-2、scene-3……として連番により発表されてきましたが、2008年のscene-36の発表を最後に、2014年の京都芸術センターでの展覧会「イマジネーション・スーパーハイウェイ」でのscene-37・scene-38の発表までその制作は途切れていました。ここで約6年ぶりに『scene』に取り組む牛島にとって、本年の『scene』の制作は、そのつくり方を思い出したり、検証したりする作業となり、その作業の中で、「断片を集めて編集する」作業に改めて面白味と可能性を感じたといいます。
本展、「sceneのつくりかた」は、2008年のscene-1にいたるまでと、scene-36からscene-37までの約6年の間を中心に、牛島が制作していた『scene』にまつわるいくつかの習作や試みを展示するものです。「異なる要素」を「繋ぎ合わせる」点に着目して試みられたドローイング作品をはじめ、牛島作品に多く用いられる「布」を要素とした作品や「モノと言葉」により空間にアプローチした作品など、sceneにまつわる作品が、その最新作とともに展示されます。
これらは「sceneとはなにか」という結論を提示するものではなく、牛島の自問にも似た確認と検証を込めて計画されたものですが、鑑賞者の皆様には牛島作品に通底する「はじまりも終わりもない物語の予感」が何によってもたらされ、どのような『scene(風景・光景・情景)』を見せているのかを知る手がかりとなるのではないでしょうか。 尚、牛島光太郎は本展開催期間に一部会期をあわせ、大阪・GALLERY wks.にて「scene-39牛島光太郎展」を開催し、『scene』の最新作を発表しています。2つの展覧会を通じて、『scene』を予感させる最初期の作品から、その最新作をあわせてご覧いただけるこの機会をぜひお楽しみください。