大村 大悟(おおむら・だいご / 1984~)は、これまでおもに土や木といった自然物、鉄やガラスといった日常的によく目にする「もの」を素材として、そこに最小限の手を加えることで、鑑賞者の認識を揺さぶり、ものの在り方や認識の変化を誘導する「こと」を起こすような作品展開を試みています。
例えば「壁に立てかけられた一本の棒っきれが、物語や歴史、記憶といった『何か』に紐づいた時、それはただの棒とは違う『何か』として認識されてしまう」ということ。
日常的によく目にするものをモチーフとしながらも、人の手が加わることで生まれる方向性や、目にはみえない力の向き、また個人がもつ記憶や経験によって変化する認識の境界のようなものを作品化します。
とする大村は日常的なモチーフを用いて、そこに鑑賞者個人が持つ知識や記憶、経験や物語といった何らかの要素を誘導することで、その認識が変化する「境界」のようなものを作品化しようとしています。
そのための方法として大村は、「もの」の意味や在り方、「空間」の持つ特性、「鑑賞者」の知識・経験・固定概念など、それぞれの要素や背景を丁寧に観察し、収集します。そうして抽出された要素は、少しばかりの手を加えられることで微かに顕在化し、そこに小さなズレや違和感をつくりだします。異なる「もの」が持つ同一の要素を際立たせたり、不可視な要素を可視化させるなど、それらは目の前の「もの」に目を凝らす中で、鑑賞者自身がそこに新たな価値や視点を持つ「状況づくり」とも呼べるものです。
ギャラリー・パルクでは2012年に続き2回目の個展となる本展で、大村は太陽の観察映像や木彫作品、鳥の巣等の資料を用いて会場内にそんな状況をつくりあげ、「鑑賞者」と「もの」と「空間」に新たな関係の「はじまり」をささやかに促します。