大洲大作(おおず・だいさく/1973年・大阪府生まれ)は、1994-95年まで大阪国際写真センター(現、IMI 写真表現大学)にて写真を学ぶとともに、1997年に龍谷大学文学部哲学科を卒業。以後、京都・大阪・ベルリンでの発表を経て、2012-13年には東京ステーションギャラリー再開館記念企画「始発電車を待ちながら」展へと出展するなど、着実に活躍の場を広げています。
代表作である一連の『光のシークエンス』は、そのすべてが列車やバスの内からガラス窓越しに外に向けられた眼差しによるもので、車窓というフレーミングの中に通り過ぎる風景を「連続する光の有り様」として、見慣れた、あるいは初めて訪れた旅先の風景は光に還元され、そこに目に見えない「光景」を浮かび上がらせています。また、その光はストロークや滲みを持った線・面となって、そこに絵画的な抽象性をも見せるものであり、この点から大洲はファインダーによるフレーミングによってプリント上に光景を「描き出している」とも言えるのではないでしょうか。
流れる(スクロールする)風景からカットアップされた美しくも幻想的な「一瞬(1コマ)」の光景は、「写真」としての本質的な特性を最大限に活用したものであり、写真ならではの表現として見ることができます。しかし、それらが集積・展開される本作において、それぞれの作品は「断片」としてゆるやかな繋がりを見せはじめ、そこに光(時間)の連なりといった事象のみならず、日常や旅情の中にある茫漠とした「物語」をも鑑賞者に起想させるものとなります。
ひとつひとつのコマは鑑賞者の記憶や想像を含みながら、再び連なり、スクロールをはじめます。そして、いつしかそこにもうひとつの「目に見えない光景」をも描きはじめるのではないでしょうか。