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Exhibition info

繁る森の外
夏池 風冴

Natsuike Kazayu

2014.4.8. 〜 4.20.

Exhibition View

10 images

Statement

風景、写真、植物といったものは、なじみがありながらも人にはコントロールしきれない現象のようなものとして私には感じられます。
それらが時に様々な意味をあてがわれ、印象を持たれ、もしくは見過ごされる、その無数の切り替わりの有様に興味があります。
そういうものによるひとつの空間をつくりたいと思います。

夏池 風冴

About

 本展は今年で2回目の開催となる国際写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE」のサテライト展である「KG+(ケージープラス)」への参加展覧会です。また、GalleryPARCではこの開催期間にあわせ、「夏池風冴展」(4/8~4/20)、「大洲大作展」(4/22~5/4)、「麥生田兵吾展」(5/6~5/18)の3つの写真展を連続開催いたします。本展はその第一弾となる展覧会です。

2009年に京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工専攻修了した夏池風冴(なついけ・かざゆ/1984年、静岡県生まれ)は、これまで写真を用いた展示を重ねてきましたが、その作品はフレーム内におさめられた被写体を提示するものではなく、「写真」を媒介として「自分が見ているものと見えていないものの関係性」あるいは「視野の外にある世界にアプローチする」ことに主眼が置かれ、写真を含む「空間」を作品として提示するものです。 

本展会場内にはフィールドワークに基づいて撮影された9点の風景写真とともに、生垣と植物が持ち込まれ、そこにひとつの空間を仮設しています。
 一見してありふれた風景が写し取られた個々の写真には、かろうじて「植物のある都市空間」、「映り込む数字(番号)」といった共通性が見て取れる以外に共通項は無いように感じられ、また「中身の反転したふたつの生垣」、「白く塗られた壁面」といった要素もその関わりあいは明確なものではありません。つまるところ「ここ(写真の内にも外にも)には何も無い」のかもしれない空間を前に、しかし鑑賞者はそこに何かを「見て」、そこから何かを「思い・考え」、そこに何かが「表現」されていると思う瞬間を体験することがあるかもしれません。夏池のしつらえた空間には、例えば鑑賞者の目があるポイントに焦点を結び、その外側(空間)へと思考・記憶が延びた果てに、そこに異なる意味(のようなもの)を見出させます。また、見出された意味は、目の前の空間との関わりあいを求めるかのようにその認識を変化させ、鑑賞者の目はまた違った光景をそこに見つけることとなるのではないでしょうか。

 夏池の作品は、「見ること」に端を発し、それらが紐づけられた経験や記憶によって「イメージ⇄意味⇄イメージ」へと転換していく体験を提示するもので、鑑賞者にその反復を呼び起こす装置のようなものかもしれません。そして、その体験をもって鑑賞者に「視野の外にある世界」の有り様を顕在化させるものといえます。
 世界は「見ているもの」と「見えていないもの」で出来ています。本展では「見ているもの」の外側にある広大な「見えていないもの」の気配を感じるとともに、その2つの間にある多様な関わりを感じ取る機会となるのではないでしょうか。