1998年に成安造形大学洋画クラス研究生を修了した木内貴志（きうち・たかし/ 京都・1973～）は、その学生時代より「神戸アートアニュアル96」（神戸アートビレッジセンター）などのグループ展への参加をはじめ、97年には初個展「木内貴志大回顧展」（VOICEギャラリー／京都）を開催以降、現在まで関西を中心に数多くのグループ展や個展による発表を続けるとともに、2009年 「After School 放課後の展覧会」（元　立誠小学校／京都）などのアーティストランによるグループ展の参加・企画なども積極的に手がけています。
　これまで木内は「キウチズム」と自称する己の主義の確立を追求を標榜しつつ、絵画や立体、映像やパフォーマンスなど、手法や素材を限定することなく、表現目的に応じた多様な形態を作品として提示してきました。
　また、たとえば木内は社会や美術といった制度やコミュニティの中にある矛盾や問題、その滑稽さなどを、あくまでも個人の興味や疑問、執着や妄想を膨らませた果ての作品によって指摘したりもします。それらは個人の中で練りに練られたシニカルな「ツッコミ」であったりしますが、同時にその多くは「駄洒落」「庶民」「ベタ」「自虐」といった香りを纏った「ボケ」としても機能し、そこに鑑賞者のアクション（笑い、ツッコミ）を誘ったりもします。
　この、いわば「ひとりボケツッコミ」とも呼べる独特のテイストは、初個展となる「木内貴志大回顧展」から、以後の「キウチアニュアル2000」（夢創館／神戸）、「キウチトリエンナーレ2004」（GALLERY wks.／大阪）、「ポストキウチズム2011」（中之島4117ポストギャラリー／大阪）など、木内のこれまでの活動やその作品においてブレることなく貫かれており、かくいう本展も2000年の個展「木内貴志とその時代～オイルショックからY2Kまで～」をメタ的に引き受けたタイトルを冠して開催されます。
　『さようならキウチさん』という思わせぶりなタイトルを銘打たれた本展は、木内の新作を中心として構成されています。また、本展と同時期に大阪・GALLERY wks.において、過去作のリミックスによって構成される『帰ってきたキウチさん』も開催されます。同時期に新作・旧作が一望できるこの機会では、都度の興味や時代のトピックに呼応し、素材・技法も様々に作品へと掘り下げる木内貴志の幅広い作品展開をお楽しみいただける機会となるでしょう。
　同時に、一見すると分散化・断片化しているようにも見える作品の数々を目にするうち、やがて新作・旧作といった区別が便宜上のものでしかないことを実感し、そこに通呈する木内貴志および「キウチズム」の「ブレのなさ」をも見ることができるのではないでしょうか。

＊同時期開催：『続続 木内貴志とその時代 〜帰ってきたキウチさん〜』　＠GALLERY wks.　2014年3月24日（月）〜4月12日（土）