Exhibition
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 ギャラリー・パルクでは、藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の3名の作家と展覧会キュレーター・宮下忠也から成る展覧会「 VANISHING POINT / 消滅点」を2014年12月2日[火]から12月28日[日]まで、その会期を2週間ごとの[シークエンスA]・[シークエンスB]と分け、連続で開催いたします。

 絵画における一般的な透視図法である「Vanishing Point/消失点」は、平行線が1つの点に集まる遠近法として、画面上に奥行きを与えることで三次元的空間を構築するだけではなく、鑑賞者の視線を意識的に引き込む機能により、その作品の主題や描き手の意図を示唆する役割をも担います。
 本展のキュレーターである宮下忠也(みやした・ただや/1976年・京都府生まれ)は、この視点を展開させ、今日的な表現の中に消失点ではなく「消滅点」という特異点を見出し、そこから作家・作品へのひとつの読み解きを構築しています。本展の出展作家である藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の作品には、いずれも明白な「消失点」は不在のままに、独自の技法による「Vanishing Point」=「消滅点」が導入されているといえます。

 2012年にGallery PARCでの個展開催以降、2013年の「APMoA Project, ARCH Vol.6 藤永覚耶」(愛知県美術館/愛知)や2014年の「BIWAKOビエンナーレ」への参加など、積極的な発表を続ける藤永覚耶(ふじなが・かくや/1983年・滋賀県生まれ)は、染料インクの点描による図像をアルコールにより溶かし、図像が消滅する寸前に現れる「イメージが個人の主観から開放され、広く共有される瞬間」を画面に定着させようと試みています。
 2014年の「further/nearer : emergencies!021」(ICC/東京)が記憶に新しい前谷康太郎(まえたに・こうたろう/1984年・和歌山県生まれ)は、構造上の特性により明確な像を結ばない自作の撮影機によって、世界を抽象化されたフォルムと色彩や光の明滅にまで還元する作品を発表しています。それは「わたしたちが見ているもの」への問いとともに、見るという「行為」そのものの本質を鑑賞者に共有させるかのようです。
 2013年の「シェル美術賞展2013」において審査員奨励賞を受賞するなど、宮崎雄樹(みやざき・ゆうき/1982年・大阪府生まれ)は、アクリル絵具による風景画を蜜蝋でコーティングし、その上から油絵具で加筆するという手法を用いた絵画制作を続けています。乳白色の蜜蝋は中間層となって「向こう」と「こちら」をつくり出し、そこに距離感とズレを生じさせることで、人間の記憶の曖昧さや意識の揺らぎを取り込み、絵画と鑑賞者をゆるやかに合流させます。

 ここに見られるそれぞれの「消滅点」は、いずれも異なる意識・要求や技法によって作品に内包されたものですが、個々の表現にとって大きな役割を果たしているのは間違いありません。宮下はそれぞれの作品をへの理解を深めるための共通項として、ここに「消滅点」というテーマを挙げるとともに、それらを「今日の私たちの体感覚に則した、広く共有しうる世界観なのではないでしょうか」として、鑑賞者に作品を通じた世界への読み解きを促します。

 本展覧会では、そのテーマや個々の作品の魅力に触れていただけるように、会期をシークエンスAとシークエンスBの2期に分け、3名の作家がそれぞれ作品・構成を変化させた展示をおこないます。どちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

ステートメント

アルコール染料インクを用いた平面図像(絵画)を表現手段とし、作品と空間と見る者の関係を探っている。
自分の制作は、写真から得た図像を元に自分の手を通して綿布の上に色彩のインクの点を置いてゆく。最後に、時間をかけて溶かしインクを動かすことで、色彩の点は混ざり合い、移動の痕跡や滲みを綿布に残す。そのようにして、作品の図像を制作する。
アルコールの浸透圧に委ねられたイメージは、綿布の染みになると同時に、個人の主観を離れ、他者と共有しうるイメージへと昇華していくように感じる。
それらを壁面展示のオーソドックスな絵画形式のシリーズと、自然光を図像に反映させ空間と作品をダイレクトに結びつけたシリーズの2つの展示形式で作品展開している。

作品は、部分である色彩性と、それらの集合としてある全体像、この両者のゆらぎによって成立している。あるときは、作品に近付くことで色彩同士の緊張関係や美しさを見いだすかもしれない。また、あるときは、全体の像に自らの経験から何かのイメージを見出すかもしれない。それらはすべて、同一の単なる綿布の色彩の染みが引き起こすことだ。
何ものでもない色彩と何かであることとの緊張関係の中で、作品・空間・見る者、それぞれが相対的な関係となり相互作用するような絵画を目指している。

藤永 覚耶

「より(more)見る」のではなく、「一歩退いて(less)見る」こと。

動画/静止画を問わず、現代の諸々のイメージは「より見たい」という欲求のベクトルに従った暁の到達点として存在する。しかし、それとは逆方向のベクトルに従ってみたとき、予測不可能かつ純粋な光の形態が存在する。この一歩退いた領域において我々が見るのは、目前の世界の別のありようであり、「見る」ことを為す我々自身の後ろ姿でもある。

前谷 康太郎

周りとの距離をテーマに制作しています。
日常の風景や情景を観察すると、一歩引いて観てしまう事があります。それと同時に、自分の存在価値や自分が立っている位置を考えてしまいます。鑑賞者が作品を観て、以前どこかで感じた記憶とのリンク・共有、または私が想像もしない感覚を与えられたらと思っています。
また素材として蜜蝋を使用しています。アクリル絵具で描いた画面に蜜蝋を流し込み、その上に油彩で描画。蜜蝋によって下層と微妙な距離感が生まれます。そして通常の絵具とは違う何とも言えない独特な表情を見せてくれます。

自分がみた光景を絵のモチーフにしていますが、カメラを使うことで無意識にいい構図やアングルを切り取っているように思います。それは自分の意識だけでなく外部からの刺激によって成り立ちます。またその背景には、気づかないうちに現代社会の膨大な情報によって支配されていることがあると思います。
カメラのシャッターが下りる(幕が下りる)ことが、作品画面で言うと蜜蝋がフィルター代わりとなっていると同時に、蜜蝋特有の乳白層は、どこかで見た光景などと想像する、曖昧な記憶とも結びつきます。蜜蝋によって感じるのは記憶の曖昧だけでなく、その光景との微妙な距離感でもあるのではないでしょうか。

宮崎 雄樹



作家略歴

藤永 覚耶|FUJINAGA Kakuya

1983年 滋賀県生まれ
2006年 京都嵯峨芸術大学芸術学部造形学科版画分野卒業
2008年 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了

主な個展

2013年 APMoA Project, ARCH Vol.6 藤永覚耶 (愛知県美術館/愛知)
2012年 foliage (Masayoshi Suzuki Gallery/愛知)
とどまり ゆらめく keeping : moving (Gallery PARC/京都)  
2011年 - into the water - (GALLERY GOHON/愛知)

主なグループ展

2014年 BIWAKOビエンナーレ2014 (滋賀)
落石計画第7期:残響 (旧落石無線通信所/北海道)  
2013年 Gallery Ort Project Closing Event (Gallery Ort Project/京都)
アーティストファイル05:Part 2 (Masayoshi Suzuki Gallery/愛知)  
2010年 アーツチャレンジ2010 (愛知芸術文化センター/愛知)
STAY:常懐荘にて (旧竹内邸・常懐荘/愛知)  
2009年 版画/視座/作家たち (ギャルリ・プチボワ/大阪)
2008年 Thinking Print vol.2 :もうひとつの写真表現(京都芸術センター/京都)

受賞

第31回全国大学版画展 町田市立国際版画美術館美術館収蔵賞
平成23年度平和堂財団芸術奨励賞
平成25年度滋賀県次世代文化賞
 
作品画像

untitled [1402]
2014 1000×2600×32mm
綿布、アルコール染料インク、自然光

作品画像

foliage [1302]
2013 2392×1343×200mm
綿布、透明アクリル板、アルコール染料インク、自然光

作品画像

forest [1304]
2013 2300×1500mm×3点組
綿布、アルコール染料インク

作品画像

untitled [1308]
2013 1450×2250mm
綿布、アルコール染料インク

   

前谷康太郎|MAETANI, Ketaro

1984年 和歌山県生まれ
2008年 東京外国語大学外国語学部 卒業
2010年 京都市立芸術大学大学院 修了

主な個展

2014年 further/nearer : emergencies!021 (ICC/東京)
2013年 distance (梅香堂/大阪)
2012年 ALA 現代の表現1(前期) 前谷康太郎 (アートラボあいち/愛知)
parallel (CAS/大阪)
2011年 (non)existence (梅香堂/大阪)
2010年 things once existed there (此花メヂア/大阪)

主なグループ展

2014年 ART OSAKA 2014 (ホテルグランヴィア大阪/大阪)
Future Tense (Yoshiaki Inoue Gallery/大阪)
2013年 Art Court Frontier 2013 (Art Court Gallery/大阪)
2012年 Spring:日常 (梅香堂/大阪)
woodlandgallery2012 (みのかも文化の森/岐阜)
HANARART 2012 (大和郡山市旧川本邸/奈良)
2010年 seasons for Morris lab. / etude for 4 monitors (森巣ラボ/大阪)

上映

2008年 ヤングパースペクティブ2008 (イメージフォーラム/東京)
 
作品画像

seasons
2011 ビデオインスタレーション 3’00’’(loop)
CRTモニター×18、DVDプレーヤー、ビデオスプリッター

作品画像

traffic
2011 ビデオインスタレーション 40’00’’(loop)
CRTモニター×12、DVDプレーヤー、ビデオスプリッター

作品画像

traffic
2011 ビデオインスタレーション 40’00’’(loop)
CRTモニター×12、DVDプレーヤー、ビデオスプリッター

作品画像

further/nearer 2012
2012 ビデオインスタレーション 2’56’’(loop) サイズ可変
暗室、特設スクリーン、プロジェクター、Mac

作品画像

distance #1
2012 305×254mm
ラムダプリント

   

宮崎 雄樹|MIYAZAKI, Yuki

1982年 大阪府生まれ
2005年 大阪芸術大学芸術学部美術学科 卒業

主な個展

2013年 Gallery Den mym/京都
2011年 トーキョーワンダーウォール都庁2011(東京都庁/東京)
2010年 信濃橋画廊/大阪
2009年 ギャラリーメゾンダール/大阪

主なグループ展

2014年 「f -エフ-」 (伊藤美術店/名古屋)
第9回大黒屋現代アート公募展 (板室温泉大黒屋/栃木)
2013年 京都アートフェア:美しいと出会う (みやこめっせ/京都)
シェル美術賞展2013 (国立新美術館/東京)
2012年 ART AWARDNEXT 2012 (東美アートフォーラム/東京)
Xmas Art Festa 2012: CADEAUX (相模屋美術店/東京)
西脇市サムホール大賞展 (西脇市岡之山美術館/兵庫)
2011年 大阪芸術大学美術学科作家展 (ギャラリーkazahana/京都)
トーキョーワンダーウォール公募2011 (東京都現代美術館)
2010年 EXPOSITION “Nouveau 2010”  (ギャラリーメゾンダール/大阪)
一日だけの展覧会:ハガキ (信濃橋画廊/大阪)
こきり展 (ギャラリー閑/三重)
2009年 独立展 (東京都美術館、国立新美術館/東京)
2008年 thing matter time 2008 (信濃橋画廊/大阪)
API2008展:国際交易における芸術企画(三重県総合文化センター第1ギャラリー/三重)
三重県展 (三重県総合文化センター/三重)

受賞

2013年 シェル美術賞展2013 木ノ下智恵子審査員奨励賞
2012年 ART AWARD NEXT 2012 青年会賞
2011年 トーキョーワンダーウォール公募2011 トーキョーワンダーウォール賞
2010-11年 第25回ホルベインスカラシップ奨学生
2006年 第2回市展:いが 岡田文化財団賞

パブリックコレクション

兵庫県立美術館:信濃橋画廊コレクション
 
作品画像

ハイ・スクリーム
2011年 1303×1620mm
キャンバス、アクリル絵具、蜜蝋、油絵具

作品画像

モデルと絵描きと僕
2014年 333×455mm
キャンバス、アクリル絵具、蜜蝋、油絵具

作品画像

臨界
2014年 318×410mm
キャンバス、アクリル絵具、蜜蝋、油絵具

   

 

空白