Competition
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|応募概要・審査結果|
Gallery PARC Art Competiton 2017

応募期間
2016年11月22日[火] ─ 2017年1月17日[火]

応募総数
31プラン

審査員
平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)、勝冶真美(京都芸術センタープログラム・ディレクター)

|審査結果|

幅広いクリエイター/クリエイションへのサポートを目的にした公募・コンペ企画「Gallery PARC Art Competition 2017」についての審査結果を発表いたします。
作家による個展やグループ展など、ご応募いただいた幅広いジャンル・内容による31のプランより厳正な審査を経て、下記の3つのプランを採用といたします。
採用されたそれぞれのプランは、以後にPARCとの協議を重ねながらブラッシュアップし、2017年7月4日から8月13日までの期間において3本連続開催による展覧会として発表されます。

「whereabouts」 応募者:近藤洋平  形式:個展(彫刻・インスタレーション)
 開催予定:2017年7月4日(火)~7月16日(日)

「湖 / 畝を旅する」 応募者:松宮恵子  形式:個展(染織)
 開催予定: 2017年7月18日(火)~7月30日(日)

「想像のアジア」 応募者:井上裕加里  形式:個展(映像)
 開催予定:2017年8月1日(火)~8月13日(日)

|審査員総評|
Gallery PARC Art Competition 2017 総評

本公募は展覧会プランの公募審査であって、作品審査ではありません。今年も1点の作品として魅力的ものは多々ありました。しかし、展覧会プランとなると作品とプランが一致しない応募資料が見られました。
 また、今回のコンペでは、絵画作品のプランを選ぶことができませんでした。これまで優れて豊穣な絵画の現在を目撃・発見する機会となってきた本コンペにおいて、絵画の不在は残念でなりません。私が見たいのは、絵画の「新しい」形式ではなく、絵画に描かれた主題の「新しさ」です。
 本公募は、なにを「新たに」作るかではなく、なにを見せたいのかが問われているはずなのです。

 今回の3者の入選プランは、アジアや認識・認知、「湖」など、主題は多様です。しかし、私たちがそれとなく抱いている世界やものの見方を問う、見せることに自覚的なプランでした。そして、展覧会を見たいという想像力を刺激するプランでもありました。ロバート・ヘンライは「強烈な関心から生まれない絵は、強烈な関心を呼び起こすこともできない」と書きましたが、3者のプランには、「強烈な関心」があったゆえに、こちらの関心を呼び起こしたと言えるでしょうか。展覧会がさらなる関心を生むことを期待しています。

 

井上裕加里「想像のアジア(仮)」
 井上はこれまで一貫して東アジアの近現代に潜在する歴史認識、文化観の差異や関係性、地域性をテーマに作品を制作してきました。今回のプランは、「蛍の光」や「仰げば尊し」などの近代音楽を取り上げ、東アジア各国における受容と地域性、愛国心を読み解く試みです。応募段階で「8月15日」を踏まえたプランから、政治的な側面に注目が集まるかもしれません。しかし、井上が提示するのは「真実」でも「正義」でもなく、国家や文化という目には見えない集団や共同体の受容や排除、境界だといえるでしょう。他者・他国を排除する動きが顕在化しているいま、「想像のアジア」を通じて私たちにとって「国家」「国民」、あるいは「他者」とは何か再考する機会となるでしょう。

近藤洋平「whereabouts(仮)」
 近藤は、大学で建築を学び、建築的な視点から場所や空間の「境界」のずれを生み出す作品を制作しています。今展では、金属などの素材の特性を生かしたインスタレーションのプランでした。とはいえ、そのプランは、素材の特徴や物質性を生かして重力や視覚認識の気づきを促す空間を構築する「建築」といった方がいいのかもしれません。
 また、タイトルに「通り雨」という気象学的な言葉を与えることにより、素材のもつ抽象的な特性を具体的な詩情あるイメージへと変容しました。それは、一夏の「通り雨」のように、空間の質を変えるだけでなく、私たちの心理にも影響する空間となることを楽しみにしています。

松宮恵子「湖/畝を旅する」
 松宮は染織を専攻し、さまざまな織りや編みの技法によって作品を制作してきました。その軌跡は、染織の多様な素材・技法を、「畝を旅する」ように「自分の指で自在に操る」ことの物質的な魅力に溢れ、その現在地点を目撃したい誘惑に駆られました。ともすれば、専門的でわかりにくい技法や素材ですが、提出資料には作品に使用する素材の断片を添付するなど、具体的、丁寧に伝える姿勢も評価されました。
 今プランでは「湖/畝を旅する」として、湖の昼と夜の風景を配置し、観者の内面の「湖」を揺るがす空間の創出を試みます。言うまでもなく、古来、染織作品にはさまざまな「湖」のパターン、「型」があります。この伝統に対して、松宮がどのような畝を旅して、「湖」にたどり着くのか、その旅の報告を楽しみにしています。

平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)

寄せられた31の応募ファイルはどれもそれぞれに魅力があり、審査は長時間にわたるスリリングなものでした。結果選出した3名のプランは、提案が言葉や資料で丁寧に説明され、創作の動機と作品を展示するということへの動機がきちんとリンクされていたと思います。
“Exhibit(展示する)”は持っているもの(hibt-)を外に差し出す(ex-)、という意味です。自分の作品を誰に、どのように、差し出すのか、その思考が展覧会プラン公募には問われているのだと思います。
中には、自分の作品をうまく言葉にできていないような印象をうける応募もあり、もったいないと感じました。修辞や比喩が多用された結果、核心にたどり着かないままの文章が多いように思います。テキストは“作品”である必要はありません。他者と作品を共有する場である展示プランを考えるには、まずは作者が客観的な眼で作品を視ることが大切なのではないでしょうか。
そして“資料”でみるプラン以上の衝動を私たちに与えてくれる、そんな展示が実現することを選出者の3名には期待しています。

勝冶真美(京都芸術センタープログラム・ディレクター)

|採用プラン概要・ステートメント・作家略歴|

*プラン名はいずれも仮のものです。

「whereabouts」 

応募者:近藤洋平  
形式:個展(インスタレーション)
開催予定:2017年7月4日(火)~7月16日(日)
詳細はこちらから

《 通り雨 》|2016年|「建築系2」(ギャラリー小さい家 / 岐阜県)|©近藤洋平

【プラン内容】
今回提案するのは、鉄や鏡といった日常で見かける素材を水のイメージに重ね、既存のギャラリー空間に意識的に配置することで、「鑑賞者」と「もの」と「空間」に新たな関係性を生み出すプランです。
水は雨や川や海などその場所の状況にあわせて形を変え、循環し、私たちの周りに常に存在するものです。
それは、絶えず変化していく社会の中に身を置く私たち自身に重なるように感じています。
その変化を鉄や鏡を素材に展開することにより、より私たちの身近なものとして意識することになるのではないでしょうか。
それらによって鑑賞者に日常では意識することはない「この世界の曖昧さや不安定さ」を再認識するきっかけになることを願います。

【ステートメント】
私たちの世界は、めまぐるしく変化を続けている。
価値観は常に変化し、あいまいで不安定。
波打際が海と陸地の境界線を変化させるように、常にゆらいでいる。
ゆらぎはなぜ生まれるのだろうか。
そして、このあいまいな世界と私はどのように関係をもつ事ができるだろうか。
この世界に残された痕跡を手がかりに、そのつかみ所のない境界を見つけだしていきたいと思う。

【略歴】
1984年岐阜県生まれ。2009年武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻建築コース修了。
主な展覧会に
2012年「水と土の芸術祭2012」(新潟市 / 新潟県)、「うつせみ」(常懐荘 / 愛知県)、「うたかた」(アートラボあいち / 愛知県)、2013年「岐阜と宇宙民藝」(なうふ現代 / 岐阜県)、「見初小学校ワークショップ」(見初小学校 / 山口県)、「トーキョーワンダーウォール公募2013入選作品展」(東京都現代美術館)、「代官山インスタレーション2013」(渋谷区 / 東京都)、2014年「混流温泉文化祭」(丸屋ビル / 静岡県)、「月をめぐる九つの物語」(ギャラリー小さい家 / 岐阜県)、2015年「in passage」(nagisArt / 静岡県)、「建築系」(ギャラリー小さい家 / 岐阜県)、「第14回KAJIMA彫刻コンクール」(模型入選)、2016年「波打ち際」(熱海市 / 静岡県)、「melting point」(熱海市 / 静岡県)、「建築系2」(ギャラリー小さい家 / 岐阜県)、「渚町5丁目4番地4F・5F・6F」(大館ビル / 静岡県)、2017年「ミズマクおおがき2017 ~大垣の新進美術家たち~」(大垣市スイトピアセンター アートギャラリー / 岐阜県)など。

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「湖 / 畝を旅する」 

応募者:松宮恵子  
形式:個展(染織)
開催予定: 2017年7月18日(火)~7月30日(日)
詳細はこちらから

《 湖 / 自分の姿を自分の目で見ることはできない 》|2016年|ナイロンロープ、綿糸、メディウム、白色アクリルガッシュ・平織|
撮影:大西日和 ©松宮恵子

【プラン内容】
普段の生活の中で得た経験は、自分自身にしか知覚できない形で蓄積される。普段意識していなくとも、誰かと会話している時などにそれらがふと思い起こされ、結びつき、またあらたに蓄積される。繰り返されるこの日々の蓄積、つまり自身の感覚世界にまつわる経験を、繊維素材と織り・編み技法を用いて造形化してきた。今回はその感覚世界に「湖」という仮の名を与えて、空間全体を自身の感覚世界に見立てて作品群を展示する。この感覚はきわめて個人的なものだが、一方で、他者と共有できる可能性があるものではないかとも考えている。自分の内面世界を空間に表現することで、美術作品を通じて他者とコミュニケーションをとることを期待している。 

【ステートメント】
美しい景色を見たとき、誰かの話に聞き入ったとき、別の時間と繋がったような不思議な感覚になります。
「不思議な感覚」以外の言葉はないだろうかと、糸を探してはイメージを積み上げます。
水を上から覗き込むような。
長い夢から目が覚めたような。
忘れていた何かを思い出すような。
頼りない感覚が物質となる喜び。
それが無駄ではないと信じて、今日も指先で畝を旅しています。

【略歴】
1994年京都府生まれ。2016年京都市立芸術大学工芸科染織専攻卒業。2016年同大学大学院工芸専攻染織分野入学。
主な展覧会に
2014年「京都市立芸術大学作品展」(京都市美術館)、2015年「染織専攻三人展」(京都市立芸術大学小ギャラリー)、「銅駝美術工芸高校卒業生グループ展 美工進展」(堀川御池ギャラリー / 京都)、「京都市立芸術大学作品展」(京都市美術館)、2016年個展「折折の景」(つくるビル gallerymake)、「染織専攻大学院生前期展」(京都市立芸術大学大ギャラリー)、2016年「京都市立芸術大学作品展(同窓会賞受賞)」(京都市美術館)、2017年「京都市立芸術大学作品展」(京都市美術館)など。

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「想像のアジア」

応募者:井上裕加里  
形式:個展(映像)
開催予定:2017年8月1日(火)~8月13日(日)
詳細はこちらから

《 Memory And Forgetting, And Oral Instruction 》|2016年|video(1’57”)
京都府アーティスト・イン・レジデンス事業「京都:Re-Search」|© 井上裕加里

【プラン内容】
Gallery PARC Art Competiton 2017において「想像のアジア」と題した個展を開催したいと思います。
8月15日は日中韓においてそれぞれ、終戦記念日・対日戦勝記念日・光復節という日です。そんなアジアが殺伐とした雰囲気となる8月15日の前週に、東アジアの関係性を主題とした展覧会を行う事で今一度アジアの地域性や文化、互いの共通点と相違点を見つめる契機を作りたいと考えます。
戦前に東アジアで流行した唱歌の詩を読み解く事でアジアの大きな歴史物語を見つめた旧作と、戦争体験をした方にインタビューを行い、個人史から戦争を見つめた新作を展示し、アジアの記憶を再構築していきます。

【ステートメント】
私は、自己と他者、内と外の関係性に関心があります。
どのような関係の他者により、 自己のどのような側面に注意が向き、それがどのような行動に結びつき、社会に影響するのかを作品を以って考察しています。

【略歴】
1991年広島生まれ。2012年倉敷市立短期大学 服飾美術学科卒業。2014年成安造形大学 芸術学部芸術学科美術領域現代アートコース卒業。
主な展覧会に
2013年個展「It's a small world」(Kunst ARZT / 京都)、「日韓交流展dd me! (海岸通りギャラリーCASO / 大阪)、「ここはどこか、あるいは何か」(越山計画 / 札幌)、2014年「成安造形大学卒業制作展(京都市美術館)、「日韓交流展CARRY MORE(韓国電力アートセンターギャラリー / 韓国)、2015年個展「井上裕加里展」(CAS / 大阪)、個展「confidential information」(Kunst ARZT / 京都)、個展「井上裕加里展」(+gallery / 名古屋)「timelake-時間の湖-(新風館 / 京都)、2016年「パイロットプラント展 赤」(CAS / 大阪)、「日韓交流展 韓日藝術通信」(ART SPACE SAGA / 京都)、京都府アーティスト・イン・レジデンス事業「京都:Re-Search」など。

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